コーヒーくんの今夜も眠れない

勝てば高揚、負ければ悔恨。眠れぬ毎日。そんな私はコーヒーくん。

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哀悼 河口先生

 河口先生が亡くなったと訃報が入り、ショックだった。

 私が横浜で暮らしていたころ、たった二回だけだが指導して頂いた。
 確か、地下鉄ブルーラインの吉野町駅から歩いて三分ほどの将棋道場だった。
 初めての対局は飛車落ちでお願いした。
 
 手合いは飛車落ちでお願いします。と伝えると一瞬「えっ…」と空気が変わった。
 隣の方は角落ちで対局しており、「みんな強いねぇ」と半ば呆れていた。

 対局は私はいつも通り中飛車に構え、自分の力を出せる形になった。
 途中私が長考して角と上がると「これはいい手だ!」と膝を叩いて褒めてくれた。
 あの時は緊張した頭でピリピリと興奮を感じていた。

 その後は調子に乗って、自分でもびっくりするような勝ち方ができた。
 あんな勝ち方はもうできないんじゃないかっていうくらいだった。

 「あなたは強いねぇ」 「駒組みが違う」 「今度は一対一で平手で勝負だ」

 お世辞なのか、本気なのか分からなかったが、とにかく笑顔で褒めてくれた。
 凄く嬉しかった。

 その日は第一回電脳戦が開催されていて、先生は現地で観戦する予定だった。
 iPadの設定が分からないとおっしゃったので、自分が設定して先生に渡した。
 簡単に説明すると、河口先生はすぐに理解してしまったのには驚いた。

 これがきっかけで、図々しくも電脳戦の感想を聞いてみたりもした。
 内容までは覚えていないが、その時の会話に瑞々しさを感じたのを覚えている。

 「今度また指そう」とおっしゃって、先生は対局現地に向かった。
 この日はあまりにも嬉しくて、久しく更新してないこのブログを書き綴ったくらいだ。


 二回目の指導はそれから半年くらい後。
 正直なところ、もう前回の事は覚えていないかなと高を括っていた。

 指導席に座ると、先生は「あなたは平手でやろうと言った人だよね」と仰った。
 私を覚えていたことと、あのセリフは本気だったことに驚いた。
 手合いを告げる前に本当に平手で対局が始まってしまった。

 どうにでもなれと角交換四間飛車に構えると「新しいのは分からないんだよ」と一言。
 私はそのセリフに半信半疑になりながらも、淡々と駒組みを進めていった。

 その先の何気ない局面で、「良い手を見つけた!」と先生は角を打たれた。
 先生はそのまま意気揚々と煙草を吸いに席を外してしまった。

 「どうぞ長考してください」 というわけだ。  
 
 あのときの自信と茶目っ気の混じった表情は今でも思い出せる。
 若々しいなと思った。

 実際この手は一目好手に映り、うんうんと5分ほど考えた。
 そうこうしている間に形に捉われないで飛車を一路寄る手を見つけた。
 相手に飛車先の交換を許すが、被害を最小限に食い止める一手だった。
 
 先生が煙草から戻ると私はその一手を指した。
 
 覗き込むように私の寄った飛車を見つめると
 「思ったよりは良くならないか」 と一言漏らしていた。
 この応酬はどうやら会話になっていたようで、この一手だけ自慢になった。

 それでも局面は不利なので、力がない私はグイグイと暴れていく一方。
 あまりにも露骨に暴れていくので「こんな事して…」と呆れ気味な河口先生。

 それから僅か数手後にはこちらが敗勢となり、「もうこれは駄目だね」とTKO。
 やはり本気を出されては全く相手にならなかった。
 自分の魔法が切れたようで、少し申し訳ない気分だった。

 それでも先生は明るく
 「この戦型、丸山戦で観戦記を書いてるから読んでみてよ」
 と仰っていた。

 「新しいのは分からないっていってたのにな」
 と少し気にはなったが、悪気がなさそうなのが清々しかった。

 それから先生の代表作「対局日誌」にサインをお願いしたが、
 筆を持っていないので、また今度ということになった。

 あれから、その将棋道場に対局日誌を預けさせてもらった。
 先生はすっかりサインの事は忘れているようで、結局今でもそのまま。
 それも何だか牧歌的でいいかなと思っていたが、いまはとても寂しい。
 この思い出と一緒に一筆頂いておけばよかったと思う。
 
 元気だった姿しか見ていなかったので、今でも信じられない。
 あの時ゆったりと背にもたれて指導していた姿がかっこよかった。

 kawaguti sensei

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